技術専門職のキャリアパスのための本『The Staff Engineer’s Path』の書評
今回は、技術専門職としてさらに上を目指すスタッフエンジニア向けの本を読んだので紹介します。どのレベルの技術者でも参考になる内容で、考え方・振る舞い・スキルアップなど、多方面にわたって網羅的に書かれていました。
なぜこの本を読もうと思ったのか#
以前はスタッフエンジニアというポジションをよく知らず、恥ずかしながらシニア以下のポジションだと思っている時期がありました。調べてみると、スタッフエンジニアは管理職とは別の技術職キャリアパスであることが分かり、興味が湧きました。これまでそうしたポジションのある会社で働いた経験もなかったため、スタッフエンジニアが具体的に何をするのか、本書から自己向上のヒントを得られないかと思って読みました。
本の概要#
スタッフエンジニアという役職は日本ではまだ馴染みが薄いですが、海外ではマネージャー(管理職)とは別に技術職としてのキャリアパスが存在します。一般的な流れは、ジュニア→ミッド→シニアと進み、その後マネージャーかスタッフエンジニアのどちらかに分岐します。
本書は大きく三部構成です。第一部はスタッフエンジニアの役割やビジョン、第二部は時間の使い方や大規模プロジェクトのリード、第三部はスキルアップや現在からの実践について述べられています。
印象に残ったポイント#
時間の使い方(第4章)#
スタッフエンジニアは日々多忙で、ミーティング、メンタリング、1on1、PRレビューなどをこなしつつ、自分のタスクも進めなければなりません。ここで重要なのは、そのタスクがビジネス面・技術面のどちらにもインパクトを生むかどうかです。インパクトのない仕事は単なる時間とスキルの浪費になってしまいます。
スタッフエンジニアの立場になると、受動的にタスクを与えられるのではなく、自分で優先順位を選んで仕事を進めることが求められます。限られた時間の中で、どの作業が本当に価値を生むかを意識して選び、実行する重要性が強調されていました。
ビジョンの共有(第3章・第7章)#
大きなビジョンやチーム全体の目指す方向を明確に認識することの重要性が述べられています。日々のタスクは細分化された目標の一部に過ぎず、プレイヤー視点で目の前の仕事だけに集中していると、チームや企業全体のゴールが見えなくなってしまいます。なぜその目標を設定するのか、ビジネス上・予算面・チームのリソースは十分か、その目標を達成すると何をもたらすのかを考え、必要ならばヘルプしてプロジェクトを最後まで推し進めることが求められます。
ロールモデルとしての振る舞い(第9章)#
スタッフエンジニアのロールモデルとしての振る舞いが紹介されています。スタッフエンジニアの言動はチームに大きな影響を与えるため、責任感を持って発言・行動する必要があります。大きな問題や障害が発生した場合は、冷静に分析して問題を分解し、優先順位を付けて対応する。解決策がそのプロジェクトに本当に貢献しているかを常に考え、自己満足で終わらせないことが重要です。また、決断に至るまでの判断過程やトレードオフを明確に認識することが求められます。
チームは敵ではなく仲間です。リスペクトを持って建設的な対話を行い、同僚が成長できるようサポートすることもスタッフエンジニアの大切な役割です。
感じたこと#
既に理解していた内容もありましたが、忙しい日々の中で忘れがちなポイントを再認識する良い機会になりました。頭の中でぼんやりしていた考えが文章として整理され、クリアになった感覚があります。
スタッフエンジニアは一人で大きな影響を与えられる存在であり、チームやプロジェクトを技術的・ビジネス的に支えていく役割を担います。網羅的な内容ゆえ、今の職場ですべてを実践するのは難しい部分もありましたが、実践できる点は少しずつ取り入れていきたいと思います。
まとめ#
本書で示される振る舞いや考え方を身に付けるには時間がかかると思いますが、できる範囲で少しずつ実践し、長期的に自分のものにしていきたいです。本書はスタッフエンジニアを目指す人や、より影響力のある技術者になりたい人にとって参考になる一冊だと感じました。